シーリング工事のポイント
昭和の頃の一戸建ての主流といえば、モルタル外壁でしたが、最近の新築の一戸建ての8割近くの外壁はサイディングです。
このサイディング外壁の工事で重要なのがシーリング工事です。
サイディングパネルとパネルとのつなぎ目の隙間を埋めるのがシーリング材です。
もしあなたの家の外壁がサイディングなら、パネル間の繋ぎ目のところを指で押すと柔らかい
ゴム状のものがあると思います。これがシーリング材です。
このシーリング材も時間とともに硬くなり劣化してヒビが入ってきます。
なので、このシーリング材も外壁の塗り替えと同様に定期的に補修が必要です。
シーリング工事はコーキング工事とも呼ばれています。
シーリング工事は時間と労力がかかる大変な作業です。しかし適当な工事をしたとしても、その上から塗装してしまえば、完成後の見た目からは、手抜きだとは分かり難いため、手抜きされやすい作業のひとつです。
手抜きされないようにするためには、しっかりとシーリングについての知識を持つ必要があります。
最近の外壁は、モルタル塗装に代わって、サイディングボードなどの小さなパネルを組み合わせて外壁が出来ています。このパネルとパネルの接続部分にはどうしても隙間が出来てしまいます。
このままだと、この隙間から雨水が浸入して建物の躯体を傷めてしまいます。
これを防ぐ為に、パネルとパネルの接合部分の隙間にシーリング材を注入して隙間を埋めます。
この作業工程の事をシーリング工事またはコーキング工事といいます。
新築の時はこのシーリング材が綺麗で弾力性がありしっかりと防水出来ていても、経年劣化で弾力性がなくなり硬くなってシーリング材にひび割れが出来てきます。このひび割れの隙間から雨水が浸透してきます。
必ず塗装前にこのひび割れてしまった、シーリング材の補修工事が必要です。
この工事は意外と手間で、ひどい場合は、職人2人がかりで3日くらいかかります。
手間だからといってこのシーリング補修工事をしないで、ひび割れてしまったシーリングのままの状態で上から塗装しても、塗装後すぐにはシーリング部分が塗料で見えなくなってしまうので手抜きの有無は判別付きません。
しかし、シーリング部分はゴム状のため、家の振動が伝わりやすいです。
そのためシーリング材の塗装部分が時間とともに剥がれてきます。
そうなると、ひび割れたシーリング材が見えてきてそのタイミングで初めて、シーリング補修工事がなされていなかったことが判明するのです。
施工から数年が経って手抜き工事に気付いても時すでに遅しです。
そうならないためにも、このシーリング工事の流れと、手抜き工事のチェックポイントを押さえておくことが重要ですね。
シーリング工事の作業の流れ
1)劣化したシーリング材の撤去
建物を傷つけないように慎重にカッターナイフを使って切り込みを入れて劣化した古いシーリング材が残らないように丁寧に全て剥がして除去します。
ハッキリ言って面倒で相当に手間のかかる作業です。
しかも上から塗装してしまえば、この作業をしなかったことは、しばらくはバレないので手抜き業者でなくても魔がさして、やらないといったこともあるかもしれませんね。
2)バックアップ材の仕込み作業
古いシーリング材の撤去が済んだら新しいシーリング材を充填していきますが
充填前に行うとても重要な作業が2つあります。
シーリング充填のポイントは、隙間の凹部分の3面接着ではなく、2面接着にすることです。
3面接着は、繋ぎ合わせるサイディングパネルの両側面の2面とサイディングパネルを固定している、建物側の金属板やボードの面との3面で接着している状態です。
シーリング材から見た場合、シーリング材の両脇と後ろの面で接合しているということです。
2面接着は、サイディングパネル結合部隙間の凹部分でサイディングパネルの両側の2面のみで接着している状態です。
つまりシーリング材から見た場合、シーリング材の両脇の面のみで接合していて奥が空洞になっているということです。
一見すると2面接着より、3面で接着している方が、接着部分が多くて気密性があり良いように思えます。
しかし3面接着だと建物の振動や揺れを直接にシーリング箇所に受けてしまうため直ぐに劣化してしまいます。
建物の揺れや振動あるいは、温度差による伸縮を逃がすために、シーリング材の両側のサイディングパネル面のみで接合して、建物との接合部分の背面にはシーリン剤を着けずに空洞にすることがポイントです。
しかし普通にシーリング材を充填しただけでは、3面接着になってしまいます。
3面接着にならないようにするためには、ボンドブレーカーと呼ばれるバックアップ材をシーリング材を充填する全ての隙間の奥に仕込みます。
バックアップ剤はいわゆる紙テープやセロテープのようなテープ状で材質として紙、布、プラスチック等で出来ています。壁面とは粘着性があってくっ付きますが、シーリング材に対しては非接着性になっています。
バックアップ材を隙間の奥に貼ることにより、シーリング材が、隙間奥にはくっ付かなくなります。
2面接着にするために欠かすことが出来ないのが、このバックアップ材の仕込み作業です。
3)プライマー塗布
バックアップ材の仕込みの次はプライマーという薬剤と隙間の両脇に塗っていきます。
これは、2面接着をより強固にするものです。
プライマーを塗る塗らないで接着力に大きな差がでます。
シーリングで重要なことは、2面接着とプライマー塗布により接着力を高めることです。この二つの事で、シーリングを強固にして長持ちさせるシーリングの要となります。
この2つの作業工程は手間暇がかかりとても時間がかかる作業です。
当然ながら、この工程もシーリング充填後はやったか、やらなかったかは判断付きません。手抜きしようと思えば手抜き出来てしまうので、悪徳手抜き業者はもちろんの事、面倒がって魔が差した、職人さんがやらないってことは、あり得なくはないです。
しかしこの工程を端折ってしまったら、シーリングの劣化が早まり、雨水の浸透により躯体の劣化に繋がります。
また、次回の塗り替え作業時にシーリング材を剥がす際にも3面接着だと、古いシーリング材が中々剥がれず撤去作業が倍以上の時間がかかったりします。
4)マスキング作業
シーリング材を充填後にシーリング材を均す際にどうしても隙間からはみ出て外壁部分に付着してしまいます。
そのため、充填個所の隙間の脇の外壁にシーリング材が付着しないように予め隙間の左右にマスキングテープをすることも大事です。
シーリング処理が完了したら、このマスキングテープは剥がします。
この作業も時間のかかる作業のため手抜き業者はこのマスキング作業を行わず
外壁にはみ出したシーリング材の上から塗装してしまいます。
当然ながらこのような部分から塗装が剥がれて劣化が早くなります。
5)シーリング材充填
シーリング材をコーキングガンで充填する際は、
シーリング材を充填する個所とコーキングガンとの間に隙間が開いて空気が入ってしまわないように一気に充填します。
つまり、ビビりながらもたもたとして充填していくと、シーリング材が途中、途中で途切れてしまい、間欠状態となるということです。
6)ヘラおさえ、ヘラ均し
シーリング材を充填したら、充填したシーリング材が乾かないうちにヘラを使って押さえて
しっかりとサイディングの側面に圧着させてます。
長持ちするように厚みを付け盛るように仕上げます。
ヘラで削ぎ取ってしまわないように注意して押さえます。
7)マスキングテープ剥がし
外壁にシーリング材が付着しないように養生していたマスキングテープを剥がせば
シーリング工事は完了です。
手抜き工事のまとめ
以上が、シーリング工事の流れとなりますが、手抜き業者の手抜き内容をまとめると
①劣化した古いシーリング材を撤去しないで上から新たなシーリング材を充填。
古いシーリング材を撤去したとしても、バックアップ材を仕込まないため、新たなシーリング材は3点接着になっている。
②プライマー塗布を行わず接着強度を高めることをしない。
マスキング作業を行わず、シーリング材が外壁にはみ出たまま上から塗装する。
このような手抜きを見極めるには
作業そのものの事を建物のオーナーであるあなたが理解して、業者に確実に施工するのか、作業工程に関して質問をして、作業中のエビデンス(証拠)として写真を撮ってもらって検収時の提出物として提示するようお願いすることが大事です。
またそもそも、業者によっては、2面接着という言葉すら知らないところもあります。
施主側が知識をつけることで、ある程度は、手抜き業者を選別することは出来ます。
しかし、騙す人間を見抜くのは正直困難なのも事実です。
実績があり信頼のある工事業者にお願いすることが賢明です。